当学会会員の皆様が分かりやすくご説明いたします。
回答者:向 博也
腎不全とは何かを理解するために、まず腎臓とその働きを知りましょう(図1)。
腎臓は、あなたの握りこぶしくらいの大きさで、背中のすぐ内側に左右に1個ずつあり、その中には毛細血管でできた糸球体という構造が一個の腎臓につき約100万個ずつあります。腎臓は、あらゆる臓器の中で最も血流が多く、毎分およそ1リットル、1日に約1,500Lもの血液が流れ、これが糸球体を通過する際に濾過を受け、血液中の不要物が除去されます。
この時に生じる尿の元となる原尿の量は、あなたが実際に一日に排泄する尿の量のおよそ100倍にもなります。糸球体で血液を濾過してできた原尿は、尿細管という管を流れる間に、体に残しておくべき水分や電解質などを再度血液に戻すことによって、約100倍に濃縮された後に尿として排泄されるのです。
これによって、食物摂取や新陳代謝で生じた余分な水分、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、尿素窒素、リンなどを取り除いているのです。また、腎臓は血液を弱アルカリ性に保つ、貧血を防ぐ造血ホルモンを分泌する、ビタミンDを活性化して骨の代謝を正常に保つ、血圧を調節する、不要なホルモンを分解・排泄する、などの大事な役割を果たしています。
腎不全とは、この腎臓の働きが正常のおよそ3割未満に低下した状態をいいます。
数日のうちに急速に生じる急性腎不全と、年余にわたり徐々に進行する慢性腎不全とに分かれますが、ここでは慢性腎不全について説明します。慢性腎不全の原因は、多い順に、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などがあります。糖尿病や高血圧が増加しているため、日本人の8人に1人は、腎不全の手前の状態も含めた慢性腎臓病の状態であるといわれています。
腎不全になると、先に述べた腎臓の働きが低下しますので、体内に水分、塩分、カリウム、リン、尿素窒素、などの物質がたまります。また、血液が酸性になりやすくなり、貧血、血圧上昇をきたし、骨がもろくなります。 その結果、むくみ、動悸、息切れ、倦怠感、食欲低下、吐き気、かゆみ、いらいら、視力低下、生理不順、性欲減退などの症状が現れます。そのまま放置すると、これらの症状が悪化して尿毒症や肺水腫、心不全などのため、死に至ります(図2)。健康診断で異常を指摘されたり、気になる症状がある場合は、すぐに腎臓内科医に相談してください。
回答者:山村 剛
腎臓の働きが低下してその本来の働きが十分できなくなる状態が腎不全ですが、腎臓は非常に頑張る臓器ですので、そういう状態になっても身体症状はなかなか表面に出てきません。ところが、非常に腎機能が低下して、20歳代の時の働きの1割を切るあたりになると、様々な自覚症状が出てきます。これを尿毒症といいます。尿毒症が出現してくると、①悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状や、②重度の高血圧、息切れ、心不全などの循環器症状や、③呼吸困難などの呼吸器症状の他に浮腫や貧血や意識障害などを呈し、非常に重篤な状態になり、このままの状態が持続すると死に至ります。腎不全は急に発症した場合(急性腎不全)と長い経過で徐々にそうなった場合(慢性腎不全)では、病態が異なりますが、どちらにも共通していることは、そのままの状態では生命に危険が生じることです。そのため、尿毒症を呈するような腎不全では、なんらかの手段でその働きを補わなくてはいけません。そのひとつが透析療法です。
透析療法には自分の身体の腹膜という部分を使用して行う「腹膜透析」と、人工的な膜に血液を通過させて行う「血液透析」があります。
急に腎臓の働きが低下した、急性腎不全の場合には低下した腎臓の働きを補う以外に、腎臓の負担の一部を除き、腎臓の障害を悪化させないように保護するために、血液透析を行うことが一般的です。一方、長い経過で生じた、慢性腎不全の場合は、最近は腎移植という選択肢もその機会がやや増えてきましたが、まだ少なく、腎臓の代替療法として透析療法を選択しなければいけない場合が多く、その場合は腹膜透析と血液透析の2つの方法があります。腹膜透析と血液透析はそれぞれが利点と欠点をもっています。それらをよく理解し、状況に応じ適切な透析療法を選択することが必要です。
透析療法は腎臓の補助療法もしくは代替療法のひとつであり、急性腎不全の場合はこの治療である程度腎臓が回復する可能性がありますが、慢性腎不全の場合は、残念ながらこの治療で腎臓の働きそのものが回復することはなく、生涯にわたり治療を定期的に継続しなくてはいけません。また、透析療法で代替できる働きには制限があり、その程度も正常な腎臓の1割くらいの効果しかありません。そのため、透析療法の不足分を補うため多くの薬剤が必要であり、また長期間治療を行っていると、様々な合併症を生じるなどの問題点があります。
回答者:田中 希尚
血液透析とは、腎臓の代わりになる人工臓器による治療(腎代替療法)の一種で、患者様には定期的(通常、週2-3回、1回3-4時間、長時間透析の場合は4時間以上)に透析治療が可能な施設に通院していただきます。透析施設には、透析を行うための機械(透析機)が設置されており、患者様は透析機を利用して血液に溜まった老廃物をきれいにします(血液浄化)。実際の方法は、まず体に流れる血液の一部を透析機のポンプによって体の外に循環(体外循環)させます。体外循環させた血液は、透析機によって透析専用の治療液(透析液)が流されている透析膜(ダイアライザー)の中に通されます。透析膜に通された血液は、浄化された状態(老廃物が抜けた状態)になりますので、再び透析機のポンプによって体内に戻されます。血液透析では血液の老廃物を除去するだけではなく、血液を透析膜に通すことによって体内のナトリウムやカリウムなどのミネラル(電解質)の調節を行います。
また、透析中に適切な体重(ドライウエイト)まで体内の水分を除去することで、体内水分量の調節も同時に行います。この老廃物の除去、電解質の調節、体内水分量の調節の作業を繰り返すことで、それぞれの人にとって適切な健康状態を維持します。全身状態の管理のため、胸部レントゲン撮影、採血、心電図などの検査も定期的に行います。
血液透析を受けるためには、血液の体外循環のためにシャント手術が必要になります。シャント手術は、前腕(一般的には利き腕の反対側)の一本の動脈と皮静脈を直接つなぐ手術で、その手術により静脈に十分な血液が流れる状態になります。十分な血液が流れている静脈側(シャント)に透析専用針を通常2本刺すことにより、血液透析が可能となります。
血液透析に関わる一連の手技は、基本的には開始から終了まで医療機関の透析専門スタッフが行います。また、患者様は定期的に医療機関に通院することになりますので体調管理をスタッフと相談することが容易です。透析に関わるスタッフは医師、看護師、臨床工学技師などです。その一方で、頻回に通院する必要があること、水分や食事制限が腹膜透析に比べてやや強いこと、血管合併症が起こりやすいことなどがあります。
回答者:角田 政隆
透析療法には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。ダイアライザーを用いて人工的な膜を介して透析を行う血液透析とは異なり、腹膜透析は文字通り、人間の腹膜を介して透析液との浸透圧差を用いて老廃物や尿素等を透析液側に移動し、排出するという治療法です。腹膜とは、胃や肝臓といった腹部の臓器を覆っている薄い半透明の膜のことです。その面積は成人で20,000cm2以上あり、毛細血管が表面に網の目のように分布しています。
腹膜に囲まれた空間を腹腔といいます(図1)が、その腹腔内に外科的にカテーテルを留置します(図2)。
腹膜透析ではCAPD(持続携行式腹膜透析)という方法が一般的に行われています。透析液の交換は、自宅や外出先で自分で行います。交換は6~8時間ごと、1日4回程度(通常は朝、昼、夕方、寝る前)です。透析液の量は1回約2リットルです。まず、おなかの中に入っていた透析液をカテーテルから空の袋に排出し、その後、新しい透析液の入った袋からカテーテルを通しておなかの中に入れます(図3)。
自宅、勤務先などの清潔な場所で、手洗いを十分に行い、決められた手順をきちんと守ることが重要です。1日1回、夜寝ている間に機械(自動腹膜透析装置)を使って自動的に腹膜透析を行うAPDという方法もあります。
腹膜透析の長所は、血液透析のように頻回な通院が必要ない在宅医療であり、社会復帰に有利なこと、血液透析に必要な内シャントが不要で血管に針を刺す苦痛がないこと、残存腎機能を保持しやすいことなどです。こうして見ると血液透析に比べ有利な治療法に思えますが、腹膜炎やカテーテル出口部感染、被嚢性腹膜硬化症など、腹膜透析特有の合併症がある点や、カテーテルに厳格な管理が求められる点など、重要な注意点もあります。また、腹膜は透析をするために存在するものではなく、その機能は年数と共に劣化することが知られており、血液透析とは異なり半永久的に施行できる治療ではないことを知っておくことが必要です。
回答者:千葉 尚市
透析方法は腹膜透析と血液透析がありますが、自分の生活スタイルや性格などに合わせて、自分にあった透析方法を選ぶことが一番大切です。 腹膜透析の一番の特徴は、自宅での治療を希望する方で、自分や家族が治療手技が出来るかたに向いていることです。一方で、血液透析は通院が可能で治療中ベットで安静さえ保つことができれば可能な治療です。治療の選択には腹膜透析と血液透析の特徴を知ることが大切ですので、以下にそれぞれの特徴を簡単に挙げていきます。
①透析開始前に必要な手術は?
腹膜透析ではおなかの中に透析用の管を入れる手術が必要となり、血液透析では腕の動脈と静脈をつなぎ合わせる手術が必要となります。
②通院頻度は?
腹膜透析では月に1~2回程度の通院が必要で、血液透析では週2~3回の通院と1回3~4時間の治療時間が必要です。
③治療を行う際に自分がすることは?
腹膜透析では透析用の管と透析液を清潔につなぎ、透析液の出し入れを行います。このような操作は簡単にできるようになっていますので、練習をすれば誰でも出来るようなります。患者さんご自分やご家族が行います。 血液透析の場合は、血管に針を刺したり、透析の機械を操作するのは医療スタッフが行いますので患者さんはほとんど何もしなくて済みます。
④治療場所
腹膜透析は自宅や職場で行うことが可能です。血液透析は主に医療施設で行います。
⑤治療期間について
腹膜透析では自分の腹膜を使用して透析を行うのでずっと腹膜透析を受け続けることはできません。尿量の減少、腹膜機能の低下など様々な理由で血液透析に変更する必要がでてきます。一方、血液透析ではそのような制限はありません。
⑥残腎機能について
腹膜透析を受けるには、腎臓の機能が残っている方が有利であり、また、腹膜透析の方が血液透析よりも、腎臓の機能が保持されやすい特徴があります。血液透析では腎臓の機能に関わらず治療を受けることができます。
⑦血圧について
腹膜透析では緩やかに体から水分が取り除かれるので、治療中の血圧は安定しています。しかし、血液透析では限られた時間の中で体の水分を除去するため、腹膜透析より血圧変動が起こりやすく、特に心臓の機能が悪いかたでは血圧変動が起こりやすいです。
医学的な理由からその治療の向き不向きもありますので、透析開始前に主治医の先生や医療スタッフと良く相談し、自分にあった治療方法を選びましょう。
回答者:柴崎 跡也
腎臓の働きが徐々に悪くなってくると尿として排泄される老廃物や不要な水分が体にたまり、尿毒症症状や検査値異常が出てきます。症状としては、頭痛、吐き気、不眠、かゆみ、いらいら、むくみなどが出てきます。検査値異常としては、カリウムが上昇したり、貧血を認めたりします。そのための治療は食事療法、薬物療法などがありますが、治療を行なっても検査値異常や症状が改善しなくなってきます。そのような状態になると透析療法が必要となります。 ひとことで言ってしまうと「腎臓が自分の体を支えることができなくなったとき」が透析を必要とする時です。透析が必要となるときは、個人差が結構あります。 以下に具体的な状況を並べてみました。
透析導入の腎機能の目安としては健康な成人の腎機能の約10%くらいです。クレアチニン(Cr)値の目安としては8mg/dlくらいとなりますが、尿毒症症状が出現すれば、Cr5台で透析が必要になる場合もあるし、Cr10台でも尿毒症症状が出現しない場合があり、あくまで透析導入の目安です。 我が国には厚労省が定めた透析導入基準というものがあり、①自覚症状、②検査値異常、③画像所見、④年齢、⑤血管疾患の有無などで点数化して評価しています。60点以上で透析導入基準を満たすこととなります。
回答者:石田 貴之
腎代替療法とは…
腎臓の機能が廃絶して末期腎不全となったら、そのままだと生命に危険な状態に陥ってしまいます。「腎代替療法」を始めなければなりません。 具体的には、透析治療(血液透析、腹膜透析)と腎移植(生体腎移植、献腎移植)のことを指します。
血液透析について…
手術で内シャントを作製し、太くなった血管に針を刺し血液を循環させます。血液をダイアライザーに通して、きれいになった血液を戻します。わが国でもっとも普及しています。 ただ治療時間が長いうえ、週3回行わなければなりません。食事や水分の制限も他と比べ比較的厳しいものです。そして内シャントの状態が悪くなれば修復術や再作製が必要になります。
腹膜透析について…
おなかにカテーテルを入れて、専用の透析液を一定時間貯留し腹膜を通して血液をきれいにします。通常一日4回30分程度のバッグ交換を行います。自宅でできる治療法です。体に対する負担も少なく、食事の制限も比較的緩やかです。 患者さん自身か家族の方の手で、バッグ交換をしなくてはなりません。菌が入ると腹膜炎を起こしてしまいます。また長期間経つと腹膜が劣化して透析不足になります。現状では5〜8年程度しか続けられません。
腎臓移植について…
いろいろな条件があり誰もが受けられるわけではありませんが、末期腎不全の方が透析を受けずに済むという意味ではいちばん理想的な治療法です。 移植にはドナーが必要であり、親子やきょうだいといった家族、血縁者からの生体腎移植と、脳死も含む亡くなられた方からの善意の提供による献腎移植があります。生体腎移植は配偶者と血縁者からの提供に限られており、献腎移植の場合日本では常にドナー不足の状態です。 また拒絶反応を抑えるためほぼ一生涯、免疫抑制薬を服用することになるので、感染に対する注意、対策が必要です。拒絶反応や元の腎臓病の再発で移植腎の機能がすることがありますが、現在では移植後の成績がだんだんと向上してきています。生体腎移植の場合、生着率は5年で93%、10年で90%です。
透析と移植ではそれぞれ長所と欠点とがあります。担当医から充分説明を聞き納得できるまで相談し、最適な治療方法を選択することが重要です。
回答者:橋本 整司・木村 朋子
1ヶ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円必要といわれています。このように透析治療の医療費は高額ですが、患者の経済的な負担が軽減されるように医療費の公的助成制度が確立しています。 透析患者が利用する公的助成は3つあります。自分が該当するのか確かめる必要があります。その3つとは「高額療養費制度」「障害者医療助成制度」「自立支援医療制度」です。
まず、高額療養費制度ですが、透析医療は、医療保険の「高額療養費」の特例である「長期高額疾病」が適用になります。加入健康保険組合等に申請し、認められると「特定疾病療養受領証」が交付されます。この制度は健康保険による制度で、また高齢者には同様の別制度があります。自己負担金は1ヶ月に1万円になります(所得の多い方は2万円)。入院と外来は別建てになりますので、入院した場合は1~4万円になることがあります。
次に障害者医療助成ですが、身体障害者手帳を取得することから始まります。腎機能障害には4級、3級、1級があり、それぞれに基準があり、これは透析の開始前の腎不全で通院治療を受けている際から基準を満たせば取得できます。自己負担分について地方自治体が独自に助成を行う制度があります。よって各自治体により支援内容が異なり、所得などにもよっても支援内容が異なることがありますので、お住まいの市役所や役場にお尋ねください。透析患者は重度心身障害者医療助成の対象になりますので、役所に申請することで、重度心身障害者医療助成受給者証、65歳以上の方は高齢重度障害者医療の受給者証の交付を受けることができ、これにより自己負担金は助成対象になります。(原則1割)(所得制限あり)
次に、自立支援医療ですが、上の身体障害者手帳を取得して手続きをすることにより、医療費の助成する制度です。ただし、所得によって自己負担限度額が設けられています。よってこれも自治体が行う支援になります。18歳以上が更生医療、18歳以下の子供は育成医療と名前が異なりますが内容的にはほぼ同じです。役所に申請し、認められると自己負担金が原則1割となります。この制度は身障手帳を元にしますので、透析前の保存期腎不全の治療の時から適応になることがあります。 他に、入院あるいは、外来透析中に摂られる食事の費用については自己負担となっています。また、通院費用については原則自己負担ですが、自治体によっては公共交通機関の割引制度や助成制度がありますので、役所にお尋ねください。介護保険につきましては、上記の制度とは関係なく、別個に認定となり、認定された状況に応じてサービスを受けられます。
例えば、札幌市の場合は、重度心身障害者医療助成受給者(所得制限あり)の場合の外来の1医療機関ごとに支払う一部負担金限度額は、入院外は「3,000円/月(院内処方の場合は6,000円)」、入院は「44,400円/月」です。
1か月の一部負担金限度額は、入院外は「12,000円/月」、世帯「44,400円/月」となります。
所得の比較的ある方は、月1~4万円。逆に市民税の非課税家庭の場合は自己負担金は初診料のみ(580円)となります。これらの制度は各自治体で微妙に異なるので各自治体にお尋ねください
回答者:佐藤 恵
普通の生活、という定義が難しいですが、いくつかの点に気を付けて生活することで仕事をしながら、家事をしながらの日常生活は可能です。 まず慢性腎不全の治療法として、主に血液透析と腹膜透析治療があります。健康な腎臓は、一日24時間、一週間では168時間ずっと働き続け、私たちの体の中の老廃物をろ過して排泄したり、必要なホルモンを分泌したりしてくれています。透析治療は、その一部の機能を代替する治療です。標準的な血液透析は週3回で、一回4~5時間、一週間で12~15時間になりますので、時間的にみても健康な腎臓の10%に満たない治療時間と理解できます。また、血液透析でカバーできるのは、老廃物の排泄や余剰な水分の除去が主ですので、ほかの機能については飲み薬や注射で対応していくことが必要ですし、毎日の食生活では塩分や水分などが過剰にならないように注意が必要になります。
腹膜透析には、いくつかの方法がありますが血液透析とちがって基本的には毎日透析を行ないますので両者を比較すると食事や水分管理には異なる点があります。いずれの透析治療を行うとしても、日々の水分、食事の管理がとても重要になりますので、外食をするときなどは注意が必要です。そのほか、血液透析では透析治療を行なうためのシャント、腹膜透析ではお腹にカテーテルが挿入されていますので、生活上それらのケアが必要ですが、それほど難しいものではありません。 通院頻度は、血液透析は週3回ですが、腹膜透析は月一回程度です(施設により異なります)。
また、祝日や旅行についてですが、腎臓が休まず働くように透析治療も継続します。したがって、祝日や年末年始も透析は続きます。旅行などに出かけるときは、血液透析の場合はあらかじめ透析治療ができる病院やクリニックを調べて現地で透析が受けられるようにしておきます。 旅行の予定があるときは担当の先生に相談しましょう。腹膜透析の場合は、透析用の備品を携行することになります。万一の機器のトラブルや備品の不足などに備えて担当の先生からの情報提供書を持参し、現地のどこの病院で対応できるかなどを調べておくとよいでしょう。震災のような災害時は、透析が通常通り受けられない場合があり、普段と異なる透析スケジュールとなったり、腹膜透析の方が一時的に血液透析を受けたりする場合も考えられます。普段治療を受けている施設に連絡をとり、指示を受けましょう。
回答者:佐々木 直美
「1日3食しっかり食べる」という食事への基本的な考え方は変わりませんが、内容は少し変わります。 透析に入ったからといって、食事が出来ないわけではありませんし、回数を減らす必要もありません。しかし、やはり透析に入ると、カロリーを十分に摂取しなくてはならない一方で、塩分やたんぱく質、カリウムやリン、水分を制限した食事療法を行わなければなりません。というのも、本来24時間フル稼働している腎臓の代わりを、週3回の間欠的な透析治療で補わなければならないからです。透析と透析の間で、いかに身体に負担をかけないような食事を摂るか、元気で長く透析を続けていくためにはとても重要です。なんとなくでも食事療法の必要性が理解できますよね。 では、どう内容が変わるのかポイントをあげます。
1、塩分と水分を制限する
塩分の摂りすぎは、血圧上昇をもたらすほか喉の渇きにもつながり、水分とりすぎの一因になってしまいます。酢や香辛料を上手に使って味にメリハリをつけ、塩分は1日7g以下に抑えます。減塩は生活習慣病予防の面からも望ましく、家族みんなで心がけることが継続していくための秘訣です。食事以外で摂取できる水分量は、残腎機能(1日尿量)によって異なります。
2、良質なたんぱく質を適量摂取する
たんぱく質摂取量は、個々の身体状況によって異なります。自分の適正量を把握することがまず大切です。透析前に蛋白制限を行っていた方は、むしろ摂取量が増えます。
3、「カリウム」と「リン」を制限する ~ポイントは調理方法の工夫と食材の選び方~
腎臓病になって初めて聞く栄養素かもしれません。「大変そう・・」と思うかもしれませんが、カリウムは野菜に多く含まれ、水さらし・ゆでこぼしなど調理方法の工夫で減らすことが出来ます。リンは、たんぱく質の多い食材に比較的多く含まれ油脂には含まれないため、食材の種類や部位を選ぶことで、摂取量を抑えることができます。
4、カロリーはしっかりと摂取する
カロリー、つまり生きていくためのエネルギーが不足すると元気が保てません。 3食しっかり食べることはもちろん、米飯を十分に食べる、油を上手に取り入れるなどで、カロリーアップをはかりましょう。
※長年の食習慣を変えるのはとても難しいことです。自らの食習慣をふまえた、実行可能で継続性のある食事療法ができるよう、積極的に看護師や栄養士からアドバイスをもらっていくことも大切ですね。
回答者:滝沢 英毅
【初級編】透析患者さんの食事以外の水分摂取量は1日尿量+500ml
透析を開始したばかりで尿が1000ml以上でている方は水分の摂取に格別の注意はいりません。腎臓の機能は透析を開始したときには正常の1/10程度ですが、時間がたつにつれて残った腎臓の機能は1/10からさらに少しずつ減ってきます。 このため透析を始めてから6ヶ月から2年程度で尿量が減少してきます。 コップ1杯程度の尿が出るなら コップ1杯(200ml)+ 500ml = 700 ml たまにタラーッと出る感じなら 0 ml + 500 ml = 500 mlです。
【中級編】塩分を控えることが水分を押さえるコツ、塩分は食塩で6g
維持透析中は尿として水分が外に出ないので体は水分を要求しません。しかしながら食事で塩分が入るとこれを薄めようとしてのどの渇きが起こります。 のどの渇きを抑える一番の工夫は食事の塩分を控えることです。 病院では塩分摂取量を1日6gとして指導しています。水分がどうしても増えてしまう人は塩分の見直しをしてください。
【上級編】透析しながら長生きできる方は、透析間の体重増加が少なく、透析中の血圧が安定している方です。皆さん塩分と水分の制限を厳格に実施されています。透析施設の先輩に塩分を減らしたおかずの内容や水分を減らす工夫を聞いてみてください。
回答者:中沢 大悟
リンは骨や筋肉を作り、さらに細胞レベルの伝達に重要な役割を果たすことから、生体にとっては必須のミネラルです。腎臓はこのリンを過不足ないように各ホルモン(ビタミンDや副甲状腺ホルモン)の指令を受けて排泄を調整していますが、腎臓が悪くなるとこのリンを排泄する事ができなくなります。リンが溜まると、血管や内臓の石灰化につながります。特に血管では動脈硬化を進行させ心筋梗塞等を起こしやすくするため、リンが高い方は寿命も短くなると言われておりリンの管理は大事です。そこでリンを適正範囲(値としては3.5~5.5 mg/dL)に保つには、次の3つが重要となります。
1、食事でのリン制限(一番重要!)
2、内服調整(いわゆるリン吸着剤)
3、透析での除去
2と3は主に医療側が調整するものですから、お医者さんと話しながら決めてもらう事になります。①の食事は患者さんが実際に食べるものであり、十分に把握して管理する事が重要です。通常の食事ではリンの含有量は1日1500~2000 mgであり、その60〜70%が体に吸収されます(900~1400 mg)。このうち、透析では1回につき300mg程度しか取り除くことができません(週3回透析とすると900mg)。リン吸着剤も下げてくれますが限界があり、厳密には食事のリンを1日800 mg以下にすると、この出納バランスが保てるようになります。リンは特にタンパク質に含まれていますが、ある程度タンパク質を摂取しなければ栄養が低下しますので、上手に摂る事を心がけてください。そこで、リンの多い食事をイメージでピックアップしたのでなるべくこれらの食材を控えるようにしましょう。
【 リンが多い食事 トップ3 】
(1)頭から尾まで食べられる小魚
しらす(860)、ししゃも(370)、イワシ(1400)等
(2)卵類
卵黄(570)、いくら(530)、たらこ(470)等
(3)合成品
ハム(340)、ベーコン(290)、チーズ(300〜900)などの乳製品、合成をする際にリン酸塩等の添加物が入り、結果的に多くなります。
逆にリンが少なくてタンパク質がとれる食事をピックアップしたのでこれらの食材を上手く利用して食事を楽しんでみてください。他にもリンの少ない食材は沢山ありますので施設の栄養士さんに聞いたりして試しましょう。
【 リンが少ないおすすめ食事 トップ3 】
(1)肉を食べるなら鶏肉
特にもも肉(160)や手羽肉(100)、タンパク質がとれてリンが少なめです。
(2)魚を食べるなら、ブリ(130)、さんま(140)
どちらも煮付けより焼いた方が塩分も少なく仕上がります。
(3)主食は精米(34)、うどん(18)が少なめ
玄米(130)やそば(83)は多いので注意してください。
※括弧内の数字は100g中のリンの量(mg)です。
回答者:今 裕史
シャントの合併症で最も多く見られるが狭窄と閉塞です。狭窄や閉塞の原因としては
などがあります。シャントを長持ちさせるためには上記の事項を避けるとともに日頃よりシャントの観察をよく行い異常が見られれば早めに主治医に連絡し受診することが大切です。
予防と早期発見のために以下のことに注意しましょう。
スリル(血流の振動)を触れたり(写真1)、出来れば聴診器を購入して実際に血流音(シャント音)を自分で聞いて(写真2) 血流を確かめましょう。スリルを触れる際には手の指を強く押し付けるのではなく、軽く触れるのがコツです(写真1)。スリルが触れない、シャント音が聞こえない時は閉塞が疑われます。 シャント肢は常に清潔に保ちましょう。発疹やかぶれは早めに対処し、傷をつくらにように心がけましょう。シャント部が赤くなったり、触ったときに痛みがあるときなどは感染が疑われます。 シャント肢での血圧測定、腕枕、手枕は避けましょう。また、袖口のきつい服、サポーター、腕時計などでシャント部を長時間圧迫しないようにしましょう。重い荷物などをシャント肢にぶらさげるのもよくありません。 下痢や嘔吐、多量の発汗、発熱などによる脱水に注意しましょう。また、過度の除水による血圧低下や血液の濃縮を避けるために体重をあまり増やさないように(理想は3-5%以内)しましょう。
回答者:安田 卓二
腎臓は、水分や老廃物をおしっことして体の外に排泄する働き以外にもいろいろな働きをしています。その一つに赤血球を作る働きがあります。赤血球は腎臓が分泌するホルモン(エリスロポイエチンと言われます)により刺激され作られます。
したがって、腎臓の働きが低下するとそのホルモンも少なくなり、結果として貧血になってきます。これを「腎性貧血」と言います。
出血による貧血とは異なりゆっくりと貧血がすすむので、動悸や立ちくらみなどの症状に乏しい傾向があります。ある程度以上進行すれば、治療として足りなくなったホルモンを注射で補ってあげる必要があります。「エポジン」「エスポー」「ネスプ」「ミルセラ」「エポエチンα」などがあります。透析毎や、週に一回、月に一回といった様々な頻度で皮下注射や静脈注射が行われ、丁度良い値の赤血球が維持できるようにホルモン注射の量が調節されます。
また、赤血球が作られる時には鉄が使われます。そこで定期的に鉄の不足が無いかの検査も行われ、足りなくなっている場合には鉄も補う必要がある場合もあります(内服や注射)。ただし、赤血球は多ければ多いほうが良いという訳ではありません。血管が詰まりやすい人では多すぎるとシャントが詰まりやすくなったり、脳や心臓の血管に血栓症を起こしやすくなる場合もあります。また、鉄も投与しすぎると肝障害や免疫力の低下(感染症にかかりやすくなる)などの合併症がおこる場合もあります。主治医の先生と相談しながら、それぞれの方にあった治療を受けていってください。